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昔、家族の職場に「なんだかな」という人がいたそうだ。

 転職してきて、数カ月たってから、突然、髪の毛が増えたのだという。要するに、かつらをかぶったのだ。なぜ、転職のタイミングに合わせなかったのだろう……。そう、イメチェンは、何かの変化の機会にするべきなのである。コンプレックスを隠すためのものなら、なおさらだ。

衣服が時代を感じさせる年季の入ったものだらけになってはいないか?

 新しい期が始まる。イメチェンのチャンスである。異動、昇進・昇格などにより、イメチェンがマストという人もいるだろう。そういえば、会社員時代、この時期は営業に異動した人がスーツを買いに行ったり、若くして出世した人がそれなりの年齢に見えるように「若作り」ならぬ「老け作り」に勤しんでいたりしたことを思い出す。

●残念なビジネスマンのタンスの中身

 この時期に、イメチェンをしたいと思っている読者諸君にピッタリの本が現れた。境野詢子氏の『背景「オトナ理系男子」さま、“着づかい”のコツお教えします』(ワニブックス)である。タイトルが長くてびっくりしたが、この題名そのまんまの内容が分かりやすく書き綴られている。

 著者の境野氏は個人向けのスタイリングアドバイザリーサービスを提供している。名刺なし、広告なし、ホームページなし、オフィスなし、ファッション業界の肩書きなし、クチコミのみに徹した形で、顧客との信頼関係と特別感を強みにビジネスを展開している。

 その彼女のノウハウが惜しげもなく公開されたのが、この本だ。「薄毛を武器にしろ」「白髪は隠さず、むしろ武器とする」「靴ひもを毎回しめなおそう、毎回靴べらを使おう」など、いちいち具体的かつ、使えるノウハウが紹介されているし、後半ではオーダーという上級テクまで提案されている。

 個人的に、最も刺さったのは実は第1章である。ワードローブマネジメントに関するこの章は、服の整理整頓を提案している。

 簡単なことのようで、これは大事な一歩ではないか? そう、オシャレじゃない人は、実は無駄に服を持っていたりするのだ。クローゼットの中に、服があふれてしまっているものである。しかも、自分の今の仕事や、体型に合っていないものを長期保有している。もっとも、株なら長期保有していれば価値が上がるかもしれないが、服はよっぽどのブランドものや限定品でない限り、価値は上がらないのだ。着ることのない服は、タンスの肥やしにしかならない。

 気付けば、時代を感じさせる年季の入ったものだらけになっている。ましてや、体型に合わないものは着ないし、着たところで似合わない。

 著者の境野さんは、ワードローブの中身と現状のライフスタイルとのかい離状態を問題視する。まずは各アイテムの「仕分け」を提案する。現役で使えるコンディションかどうかを厳しくチェックして「現時点で着ない」と判断したら即刻処分することが大切だ。「いつか着るかもしれない」の「いつか」はたいていやってこないのだ。

 着眼点はサイズ、現状の立場、今の気持ち、着心地、時代遅れのものなどだ。それは即刻処分だ。着る頻度が高いお気に入りのものも、逆に傷みが早くなるので、見た目がくたびれたらすぐ交換する。1着買ったら、1着捨てるくらいの勢いでいくと、クローゼットのリバウンドも防ぐことができる。

 このようなワードローブマネジメントが私にとって最も響いたポイントだ。これは、読書家たちが提唱する本棚分析にも通じるものがある。次に読むべき本は本棚を見ればよく分かる、と。もっとも本の場合は、いつか読み返す可能性があるが、服の場合はなかなか着ないものである。だから、捨てるのは正しいのだ。

 ビジネスパーソンは忙しいがゆえに、ついついワードローブマネジメントが無頓着になってしまう。特に、体型が変わっていたり、役職が変わると必要とされる服は変わったりするのにもかかわらず、である。気付けば、似合わない服を着てしまっていないか。

●服を捨て、町に出よう

 なお、服に関するエピソードと言えば、「夢をかなえるゾウ」(飛鳥新社)シリーズや「人生はニャンとかなる」(文響社)のシリーズで知られる水野敬也氏のエピソードを思い出す。

 彼は以前、真のファッションノウハウを確立すべく、持っている服を全部燃やし、全裸から出直すという取り組みをしたことがある。いまだにそのログが、しかも公式サイトに残っていて笑える。いや、最後は全裸になるのはどうかと思うが、イメチェンをやるなら、いらない服を全部捨てるくらいの勢いがあってもいいだろう。

 また、私の愛読書「課長島耕作」(弘兼憲史、講談社)シリーズは、主人公の島耕作の出世、高齢化に合わせて服がどんどん変わっていくのが印象的だ。課長時代はスタイリッシュなきれいめ系だったが、役職が上がるにつれ、服の高級感が増していく。

 若干の自分語りをするなら、私は大学教員、評論家という自分のポジションを考えて服を買っている。グレード感、やや在野的な雰囲気になることを大事にしている。境野さん流の整理術は実践しているほうで、今の自分に合わないと感じるものは、どんどん手放すことにしている。

 今なら、ファストファッションはもちろん、それ以外のブランドでも良いものを安く買える時代である。新しい期を前に、服を捨てて新しい自分を求めて町に出よう。

(常見陽平)

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ではまた。

はなしゃん 薄毛になってきたら。